アジョシ

9月の終わりに観たのだけど何度も更新を失敗したので・・・。

「未来を生きるものは、今を生きる者に殺される」

この映画で一番印象的な台詞です。

ちょうど映画が公開されていた頃にTHE INTERVIEWSでよく答えられてた質問「人を殺してはいけない理由は何ですか?」という問いかけについてを観賞後にふと考えていました。
多くの回答者が答えているの刷り直しになってしまいますが、この映画への感想として僕もなんで人を殺しちゃいけないのかという事を述べたいと思います。

勿論、この日本で人を殺せば罰せられます。なんで人を殺す事を法で規制しているのか。

現代よりも人を殺す手段が身近だったであろう江戸時代を舞台にした映画「一命」を観たときも同じ問いかけをしました。

「なんで人を殺すのを最終手段にしているのか」

だって、武士なんて他の身分に比べて一番の能力は人を殺傷する力。ただその力で下の階級を押さえつけて統治している訳ではなくあくまで最終手段としての暴力として殺傷を用いている。


それは、人が扉の外の物音に耳を潜めるよりも音楽に耳を傾けるために、人が相手より長く生き延びる知識を得るよりも詩や物語の世界を楽しむために、そして隣人の裏切りに怯えるよりも互いに支え合う大切さに価値があるはずだからなんだと思う。


人は人を殺せる。
それも、かなり簡単に。死はそれくらい近いところにある。

生きることが、生命である意味ならば、殺し合って生きることも十分に生命としての本分を達しているはずだ。


でも、そんな世界に生きたいと心から思えるだろうか。


ウォンビンが演じるテシクは、誰よりも強く誰よりも生きるだろう。
ただ彼が生き残ってきた世界において彼は「生きたい」と強く感じる事ができただろうか。

彼の抱える絶望は、人の尊厳を守る番人として命の交換を行う最前線に立たされている葛藤なんだろう。


あのクライマックスはそんな彼が痛々しくて可哀想だった。


最近の韓国映画とは違い非情なまでのリアリティーの追求により見終わったあとも引きずってしまう、そんなラストを予見していたんだけど、今作は珍しく最後に救いが待っている。

とても面白いアクション映画だった。